半月と硝子のブイ

so-net 『半月と硝子のブイ』の再開

『六月の雨の夜、チルチルミチルは』〜ぐっどばい

友部正人に "6月の雨の夜、チルチルミチルは" という好きな歌がある。美しく切ないながら楽しいメロディに乗せて、彼のどことなく音程のズレた様な朴訥な声が、哀しい…そう、悲しく"刹那過ぎる内容"を歌いあげる。 以前より幾つかのアップをYouTubeで観聴き…

『モーターサイクル・ダイヤリーズ』〜河を渡る

俺はどうする?俺はゆくのか? それとも此処に留まるのか?俺はどうする? 其の河を渡るのか? それとも渡らないのか? 自問する為にだろうか…盤を購入してから回数は忘れた位に観た。 映像に満ちる風景がチャランゴの音色に導かれ、ヤケに沁みる。 あの頃、…

『ロストチルドレン』〜胡座の中、揺蕩う小舟

ジャン=ピエール・ジュネ監督作品の中で一番好きな物語り。そう、或る完成度の高い物語りである。 そして既に社会人と成って久しい我が娘が未だ幼い頃、ワタシの胡座の中でちょこんと座り、何回も一緒に観た忘れられない作品でもある。 娘がこの作品を観る…

『ミラーズクロッシング』〜森の小径に吹く風

この作品、好み過ぎてなかなか文が書けなかったのだった。過去何回観たか覚えてない。見てくれや表層事象ではなく、主人公ガブリエル・バーンの立ち位置や精神の流離いと咆哮というか…兎に角、コチラ好みの琴線真ん中をダーツで射抜いてくる。 "ミラーズクロ…

『エレファントマン』〜後ろの向こうの方

当時、池袋で教育実習生と観た。当方は生徒だったから奢られた。17歳の誕生日プレゼントだった。五歳上の美術系女子大生H.S.姐さんはワタシには怪しく(妖しく?)艶かしく、Hな感覚でしか眼に映らずだった。併し本作の強烈なインパクトには打ちのめされた。館…

『ロストリバー』〜底の方に在る町

何か一つの対象作品に向かい、私達は本当に真っ白な感覚で掴み取ることはなかなか… "言うは易し行うは難し"というもの。 どんな尺度をもって向かい合うか? どんな比較で相違や引用に気付いて、はたまた教えや刺激を見つけるのか? それは、一人一人が生きて…

『ピアノ・レッスン』〜浜辺と廊下にチャリー・ワッツ

過去3回は鑑賞した作品。 どなたかが仰っていたー映画は自分にとってつまらない作品を数多く観るより、好きな作品を何回も見返す方が人生は豊かになるーたしかにそうかも知れない。で最近、同監督の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を観た際に本作を思い出した…

『レオン』〜黒いサングラスの子連れ狼は牛乳が好き

当時劇場公開版を観て、思い切ってDVD買い(当時は高かったのょ!)その後4-5回は観て、完全版の廉価版が発売され出して直ぐ手に入れて3-4回は観て。 『ゴットファーザー』や『パルプ・フィクション』や、色んな意味でエポックな映画が彗星の如く現れ、その時…

『クレイマー,クレイマー』〜フレンチトーストの味

フレンチトーストを作る時に思い出した作品。実際に我が身に同じ事が起きてからは観る機会が無い。"機会を設けてない"が正確かな。 この世には、明るい離婚の経験者もいるだろう。 ワタシは現在は或る意味では幸せだが、離婚当時は人生最悪の暗雲たる砂漠に…

『フラガール』〜松雪さん御免なさい

年度末に向かいどの仕事現場も忙しい。例年の如く今月からワタシも他業者の現場に助っ人に出ている。請けている現場は納期的に余裕が出来たのであまり苛々せずに。常用扱いの助っ人で勤しんでいる訳だ。 車で片道1.5hの道すがら或る看板が目についた。肌もあ…

ボッシュしゃっは、ベーコンろざりお

映画『謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス』を配信動画を契約する以前、某レンタル店の棚に並んだ途端に借りて観た。日本語表記ではボッシュ或いはボッス等と書かれてきたが、本作に於いてはボス。正確な発音を知らないからワタシの中ではボッシュ。 ヒエロニ…

『バスキア』〜南十字星は見ている

我の青い春に重なり、好きな俳優達が目白押し。誰も彼もがあざとくはないサービス満点の演技をしていて、自分にとっては別枠的に南十字星みたいな作品。 監督ジュリアン・シュナーベルは自らが画家であり、作品の好き嫌いを越えたアプローチの迫力は相当なも…

『ディア・ハンター』〜"This is this."

初見は20代前半。以降10年に一度位の頻度で観たくなる。長尺の為、そしてラストへ向かう深淵を心して、そう安易には観返す踏ん切りがつかない。けれど自分の中の映画ベスト10の7〜10位辺りに必ず君臨する作品だ。 * 出兵前に皆で山へ鹿撃ちに行く。軟派なカ…

『レスラー』〜明日のミッキー

釜の底に居た低迷期に初鑑賞。当時、映画館で観る金も時間も無く、ひたすらレンタル店の棚に並ぶのを待って観た。 心に響いた。 あれから10数年の年月が過ぎ、改めて鑑賞。当時とはまた違った感想も随所に感じながらも、やはり胸の奥の方にゴングが響いた。 …

『天国の日々』〜マリックのマジック

或る一つの選択。 その歯車が回り出したら、もう元には戻れない。 幾ら悔いても取り返しは付かず。 その選択に悪魔の様な悪意が無かったとしても、人は人を、人の心を弄んではいけないー 実はそんな重いテーマを、何という美しい映像と少女を語り部に置くこ…

『座頭市』〜落ち葉は風を恨まない

勝新は別格である。 パンツにマリ○ァナやコ○インの話じゃあない。 「悪名」シリーズは先に自害した田宮ではなく彼が居たから成り立つ。刑事物でも何でも彼は彼、きっと全てがアドリブな勝新。そこに、ひたすら"The 勝新"が居るのだ。 やはり"勝新と云えば座…

NICK CAVE のドキュメンタリーを観て

ニック・ケイブトム・ウェイツレナード・コーエン(七変化的な発声で)デビッド・ボウイetc. 彼等の低音ボーカルが好みだ。 彼等は皆が内省的な消化を、時にプライベートごとドラマチックに、そして創作の上では其々独歩で築いてきた人たちだと思う。所謂売れ…

釜の底 3/3 (『赤目四十八瀧心中未遂』に想う)

(2/3からのつづき) 何年続けたのだろう… 建設現場のスラブ上で転び錆びた釘を踏み抜いて放っていたら赤紫に腫れ上がり、手術の為に入院する羽目になった。 2年程が過ぎた頃だったか、原因不明の利き手の小指下側面の血管に瘤が出来る病気になり掌が自由に動…

釜の底 2/3(『赤目四十八瀧心中未遂』に想う)

あの時代の私は… 大多数の赤の他人に紛れ、埋もれまいと必死にもがきながら、我が人生最大の(否、最低の)孤独を痛感していた。 世間ではバブル崩壊後の迷走した世相の中、派遣会社なるものが乱立し始め、来るべき老齢社会に向けてホームや関係施設他バリアフ…

釜の底 1/3(『赤目四十八瀧心中未遂』に想う)

久々の連休に『赤目四十八瀧心中未遂』を観た。 初回と2回目は15-6年程前、3回目は神奈川の西に居を移してからだったと記憶。つまり今回で4回目の視聴だと思う。何故、観たくなったのか…多くの映画作品の中、何故コレを今選んだのだろう…考えていたら様々…

『チャイルド・オブ・ゴッド』を観て

C.マッカーシーの小説は『すべての美しい馬』に始まり未だ三冊だが読書済みだ。しかし20年近い長い間に三冊それぞれをかなり苦心して読んだ記憶がある。それは文体が自分の肌に合わなかったのかも知れない。全てが長編だし、対訳によっては非常に読みづらく…

熱海伊豆山土石流災害に思う

過去の思い出に重なる場所でもあり、私が山仕事の従事者でもあるからか、この度の熱海伊豆山の災害事象には連日考えさせられる。 この期に及び現地に足を運んだ訳ではないがドローン映像を幾つか拝見すると、樹木の皆伐(全伐採)が行われたのが問題だと感じる…

トムとヴィムとデニス 〜過渡期の発光

何故だろう…映画『アメリカの友人』の発光は数十年という時を経て今なお私の胸で続いている。 20代前半に深夜TVで荻昌弘解説で名画劇場番組で初見。同時期のヴェンダース作品で映画館で観た"パリ・テキサス"や"ベルリン〜"より胸が騒いだ。 あれから数十年が…

Gemini

『Gemini』 おしゃべりは銀 沈黙は金 我のものさし 我の胸 我の天秤 我の胸 揺れ惑う両端の いつもうるさい二人の自分 一人がいつも 黙って視ている もう一人が低く 耳元で囁く やらないで 満足かい? やってしまって 平気かい? そんなで一体 どうするんだ…

秘密の梯子

『秘密の梯子』 秘密が強くする 熱の在る秘密 きっと話してはいけない 名も無き者の悦びは 名も無き者の哀しみは 言葉はツールに過ぎず 沈黙に答えは宿る 君は 底の方に問いかける 梯子を探し 君の梯子を登れ 君の 秘密の梯子を 秘密の 君の梯子を 登れ * 2…

VOICE

『VOICE』 夢の中 子供の声で呼ばれた 何処か遠く ここではない 何処かから 君に話せば笑われてしまう のろまな僕の足跡の蓋を 天から声が降りて来る 夜の天井より深く ここではない 何処かから 他人に話せば忘れてしまう のろまな僕の胸の耳が アナタの声が…

君は必ず知るだろう

『君は必ず知るだろう』 蒔いた種の何れかが 水と熱に起こされて やがて色白の芽を出す 誰に教わる事無く 天に向かう そして 暗い土の中では 既に何れかが 声も出さずに死んでいるのを いつの日か 君は必ず知るだろう 緞帳が上がり 稽古の通りに 企画の舞台…

私もまた、シムラー

驚いて言葉が出なかった。突然過ぎて… テレビを持たず観ない暮らしを始めて10数年、彼の姿は時にスマホの記事内の写真か動画で目にする位で。然し今改めて思うに… 彼は僕の恩人の一人でもあったのかも知れない。存在が当たり前過ぎて、改めて想う事無く過ご…

暗い夜の白い雲

10代から色んな場所を流れて来た。様々な場所で色んな人と触れ合って来た。その土地に於いて親切にしてくれる人とも出会えて来たし、優しく出来た事もある。 期待されて厳しくされたり、逆に敵視され無視されたり…失敗もしたし、嬉しくて泣いたりもしたし、…

岸辺のアルバム

又一人、昭和の名女優が逝ってしまわれた… 思えば「岸辺のアルバム」は初めてシリアスな大人の世界や社会性の高いドラマという物に触れた作品だった。その後、好んで山田太一や倉本聰の作品を観た気がする。 数年前、映画館で観た「ディア・ドクター」での彼…