半月と硝子のブイ

so-net 『半月と硝子のブイ』の再開

2021-01-01から1年間の記事一覧

『ディア・ハンター』〜"This is this."

初見は20代前半。以降10年に一度位の頻度で観たくなる。長尺の為、そしてラストへ向かう深淵を心して、そう安易には観返す踏ん切りがつかない。けれど自分の中の映画ベスト10の7〜10位辺りに必ず君臨する作品だ。 * 出兵前に皆で山へ鹿撃ちに行く。軟派なカ…

『レスラー』〜明日のミッキー

釜の底に居た低迷期に初鑑賞。当時、映画館で観る金も時間も無く、ひたすらレンタル店の棚に並ぶのを待って観た。 心に響いた。 あれから10数年の年月が過ぎ、改めて鑑賞。当時とはまた違った感想も随所に感じながらも、やはり胸の奥の方にゴングが響いた。 …

『天国の日々』〜マリックのマジック

或る一つの選択。 その歯車が回り出したら、もう元には戻れない。 幾ら悔いても取り返しは付かず。 その選択に悪魔の様な悪意が無かったとしても、人は人を、人の心を弄んではいけないー 実はそんな重いテーマを、何という美しい映像と少女を語り部に置くこ…

『座頭市』〜落ち葉は風を恨まない

勝新は別格である。 パンツにマリ○ァナやコ○インの話じゃあない。 「悪名」シリーズは先に自害した田宮ではなく彼が居たから成り立つ。刑事物でも何でも彼は彼、きっと全てがアドリブな勝新。そこに、ひたすら"The 勝新"が居るのだ。 やはり"勝新と云えば座…

NICK CAVE のドキュメンタリーを観て

ニック・ケイブトム・ウェイツレナード・コーエン(七変化的な発声で)デビッド・ボウイetc. 彼等の低音ボーカルが好みだ。 彼等は皆が内省的な消化を、時にプライベートごとドラマチックに、そして創作の上では其々独歩で築いてきた人たちだと思う。所謂売れ…

釜の底 3/3 (『赤目四十八瀧心中未遂』に想う)

(2/3からのつづき) 何年続けたのだろう… 建設現場のスラブ上で転び錆びた釘を踏み抜いて放っていたら赤紫に腫れ上がり、手術の為に入院する羽目になった。 2年程が過ぎた頃だったか、原因不明の利き手の小指下側面の血管に瘤が出来る病気になり掌が自由に動…

釜の底 2/3(『赤目四十八瀧心中未遂』に想う)

あの時代の私は… 大多数の赤の他人に紛れ、埋もれまいと必死にもがきながら、我が人生最大の(否、最低の)孤独を痛感していた。 世間ではバブル崩壊後の迷走した世相の中、派遣会社なるものが乱立し始め、来るべき老齢社会に向けてホームや関係施設他バリアフ…

釜の底 1/3(『赤目四十八瀧心中未遂』に想う)

久々の連休に『赤目四十八瀧心中未遂』を観た。 初回と2回目は15-6年程前、3回目は神奈川の西に居を移してからだったと記憶。つまり今回で4回目の視聴だと思う。何故、観たくなったのか…多くの映画作品の中、何故コレを今選んだのだろう…考えていたら様々…

『チャイルド・オブ・ゴッド』を観て

C.マッカーシーの小説は『すべての美しい馬』に始まり未だ三冊だが読書済みだ。しかし20年近い長い間に三冊それぞれをかなり苦心して読んだ記憶がある。それは文体が自分の肌に合わなかったのかも知れない。全てが長編だし、対訳によっては非常に読みづらく…

熱海伊豆山土石流災害に思う

過去の思い出に重なる場所でもあり、私が山仕事の従事者でもあるからか、この度の熱海伊豆山の災害事象には連日考えさせられる。 この期に及び現地に足を運んだ訳ではないがドローン映像を幾つか拝見すると、樹木の皆伐(全伐採)が行われたのが問題だと感じる…

トムとヴィムとデニス 〜過渡期の発光

何故だろう…映画『アメリカの友人』の発光は数十年という時を経て今なお私の胸で続いている。 20代前半に深夜TVで荻昌弘解説で名画劇場番組で初見。同時期のヴェンダース作品で映画館で観た"パリ・テキサス"や"ベルリン〜"より胸が騒いだ。 あれから数十年が…

Gemini

『Gemini』 おしゃべりは銀 沈黙は金 我のものさし 我の胸 我の天秤 我の胸 揺れ惑う両端の いつもうるさい二人の自分 一人がいつも 黙って視ている もう一人が低く 耳元で囁く やらないで 満足かい? やってしまって 平気かい? そんなで一体 どうするんだ…

秘密の梯子

『秘密の梯子』 秘密が強くする 熱の在る秘密 きっと話してはいけない 名も無き者の悦びは 名も無き者の哀しみは 言葉はツールに過ぎず 沈黙に答えは宿る 君は 底の方に問いかける 梯子を探し 君の梯子を登れ 君の 秘密の梯子を 秘密の 君の梯子を 登れ * 2…

VOICE

『VOICE』 夢の中 子供の声で呼ばれた 何処か遠く ここではない 何処かから 君に話せば笑われてしまう のろまな僕の足跡の蓋を 天から声が降りて来る 夜の天井より深く ここではない 何処かから 他人に話せば忘れてしまう のろまな僕の胸の耳が アナタの声が…

君は必ず知るだろう

『君は必ず知るだろう』 蒔いた種の何れかが 水と熱に起こされて やがて色白の芽を出す 誰に教わる事無く 天に向かう そして 暗い土の中では 既に何れかが 声も出さずに死んでいるのを いつの日か 君は必ず知るだろう 緞帳が上がり 稽古の通りに 企画の舞台…