半月と硝子のブイ

so-net 『半月と硝子のブイ』の再開

『レオン』〜黒いサングラスの子連れ狼は牛乳が好き

当時劇場公開版を観て、思い切ってDVD買い(当時は高かったのょ!)その後4-5回は観て、完全版の廉価版が発売され出して直ぐ手に入れて3-4回は観て。

 

ゴットファーザー』や『パルプ・フィクション』や、色んな意味でエポックな映画が彗星の如く現れ、その時代時代で世界中の各地でヒトビトを魅了する。好き嫌いは別として多岐に渡り影響を与えたりする。そしていつしか、その映画"以前・以降"なんて表現の物差しに挙げられたりする。
しいては"本作も例に漏れず"とワタシは思ったりする。
レオン以降の少女と "子連れ狼" 的な作品(意味通じない世代も多いのかしらん)や "孤独な暗殺者の迷い逡巡" 的な作品の数、そして脚本内容の展開を鑑みればそう思う。

 

然しながら、個人的には脚本や演出や照明やカメラワークや編集の全てに於いて、(超ド級に金や時間をかけても怠惰な作品も世の中には在るのに対し) 監督の当時の若さとやる気(世界に打って出る前向き感みたいな)が大爆発な本作品。それらを勢い余ってやり過ぎる事なく全体をセンスで帳尻合わした力量は脱帽である。

同監督のその後の何倍も費用かけた作品より、初期の『サブウェイ』や本作には前述のセンスと未だイヤラシクはないチカラが感じられる。

特に画面トーンの統一と場面場面の緩急や。そして何より、レオンの黒とマチルダの赤、牛乳の白や観葉植物の緑…それらの所謂原色が知らず知らず、観終えて尚も私達の脳裏に残像として思い浮かぶ筈だ。その手腕にワタシは拍手したい。
タランティーノとは又異なる意味で監督自身が大の映画好きなんだろうと思われる引用場面も前半導入部から多々観られ、そんな気付きも面白い。
キャスティングの秀逸さ=ハマり具合も拍手×拍手だ。

主演のレオン役ジャン・レノとマチルダナタリー・ポートマンは他に類をみない位に存在自体が唯一無二にキャラ立ちしていた。

併し、そう…初見から年月が過ぎようと忘れられないのが所謂敵役の警部役ゲイリー・オールドマンだ。

以降、他の作品で彼に逢うと、本作でマチルダのパパを仕留めに行った際にピルケースに用意していたカラフルな薬を顔を真上に向けて飲む姿が、必ず思い出されてならない。劇場で初めてあの演技を観た時の衝撃は未だに覚えている。


やはり本作が大好きなパートナーの前で、未だに時々ゲイリーの真似をして微妙な笑いをとっているワタシだ。あまりしょっちゅうやっていると、終いには "もういいや" なんて捨て台詞で投げ捨てられるが…(苦笑)

(余談になるが、G.オールドマンは"シド&ナンシー"での成り切り演技もかなり素晴らしかったが、ワタシの中では本作刑事がダントツピカ1かな。)

 


何を観ようか迷ったら難しい事は考えずに、良い意味でチープで可愛い変化球の純愛映画を観返してみよう。


アナタもカラフルな錠剤を、顔を真上にして、首筋張って、息んでゴックンと飲んでごらん!

コップに注いだ牛乳でもいいよ!


きっと真っ直ぐ純な気持ちに成れるから。

 

 

時代が変わり、当作品の脚本設定が道徳的に不適切だとかなんとか…世間がどう批判対象を連ね様がワタシの評価感覚にはあまり関係ない。
んな事言い出したら、殺したり犯したり壊したり裏切ったり…不道徳な映画ばっかりじゃないか⁉︎って事だよ、いつも言いたいのは。

批判するのは簡単だ。

槍玉に挙げられるのは、それだけ影響大な魅力が有るからこそだ。


不道徳な要素あっての映画にこそ、ワタシは道徳かどうかは知らないが何か大切な事を教わって来た訳だから!

 

『レオン』…少なくともワタシにとっては、己の"汚れ具合"を省みる…そんな尺度の、大切な映画の一つなのでした。

 

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