半月と硝子のブイ

so-net 『半月と硝子のブイ』の再開

『フラガール』〜松雪さん御免なさい

年度末に向かいどの仕事現場も忙しい。例年の如く今月からワタシも他業者の現場に助っ人に出ている。請けている現場は納期的に余裕が出来たのであまり苛々せずに。常用扱いの助っ人で勤しんでいる訳だ。

車で片道1.5hの道すがら或る看板が目についた。肌もあらわな女性達がフラを踊っている。みんな笑顔だ…この寒空の下、違和感。(笑) しかし其の横を通り過ぎるから毎日眺めてしまう。で、この映画を思い出したんだ。

ところがワタシときたら、何故か松雪さんの顔が脳裏を掠めて、昔を思い出してなんだか複雑な気持ちになった。

 

先ず本作と云えば蒼井優なんだが。岩井俊二作品に出ていた初期の彼女は、それまでに無いタイプに感じ、かなり気持ち的に応援していた。

九州出身女子ってなんかわかるんだな…おっとり話す様に見えて、内心に秘めた強さ頑固さが芯にあってさ。

あと、しずちゃんも頑張っていたよな。

それから松雪さんだ。マツユキさん…う〜む、ワタシはどうしても口の中が苦くなる様な、ストレートに言ってしまえば苦手な容姿の女性。ある頃からだ。かなり苦手になってしまったのだ。

 

 

昔、17〜26歳頃迄の約10年間、東京で本気で音楽を演っていた。バイトで生活の糧を得ながら、時に二つのバンドを掛け持ちし、しかしながら客入りが良い晩にしても取り分は打ち上げで呑んだら消えてしまう〜所謂売れないバンドマンであった。今回、その音の内容は割愛しよう。

当時、世間はバブル絶頂期。 学歴の無いワタシでさえアルバイトが嫌になったり都合が合わなければ直ぐ辞めて、極端な話は翌日には違う仕事を見つけられる、そんな時代がたしかにあったのだ。今では信じがたい。 フロムAやアルバイトニュース等、求人誌の厚みは日に日に増して1.5〜2センチ位はあった事さえ記憶している。

 

ワタシは単発で日当の良い肉体労働を中心に流れていたのだが、辛い経験も多かった。然し順応性が幸いしたのか職人的な業種に於いては重宝がられたと思う。測量や設備や鉄筋や解体や木工所や染色工場や携わった職種は20種近い。ところが、安全靴まで購入して臨んだ土建屋の手元仕事で、ついつい調子に乗り尾骶骨付近に怪我をしてしまった。

それが理由か判らないが、そこから身体のバランスが崩れたらしくアチコチが直ぐ痛んだり疲れやすくなってしまった。

肝心のバンド活動…否、普通の生活自体にも支障を来す為、肉体労働はもう難しかった。なので知人の紹介から版下デザインの会社で働き出した。初めてのデスクワークだった。

青森県出身の寺山修司似の社長にも目をかけて頂き、何度も社員になりなさいと勧めて頂いたが、頑なにアルバイトで通した。全部で4年間位だったか。日当にしての給金は以前より下がったが、肉体的には楽で仕方なく、時給も半年に一回50円づつ位上がるのだった。

そこで月一催される呑み会での食事の全てが貧乏な若者にとっては生唾モノで、初めて口に入れた食物も多かった。

社員の何人かは時々LIVEにも来てくれたし、仕事帰りによく食事を奢って貰ったり。

見習い試用期間の女の子と仲良くなり勢いでホテルにシケ込み、翌日同じ服装で出勤していたら先ず部長格の先輩に説教され、再び社長に呼ばれ笑いながら諭された。「君が外で何をしようが勝手だが、このケースはよくない。皆に影響がある。わからない様にしたまえ。」みたいな。

結局その娘は直ぐ辞めてしまい、その後暫く周りからネタ的に嫌味を言われ続けたりしたのも、今となっては懐かしい思い出だ。

 


(再び)然し!その辺りから或る一人の先輩女史からのワタシに対する執拗なイジメが始まり、それは或る事情からワタシが辞める直前迄長く続いた。

デスクとしては直角に背を向け合う様な位置関係、声のトーン、顔の輪郭など未だに覚えてしまつている。

味方になってくれた優しい女先輩も居たが直に結婚退職され、他の男達はキャリアの長い彼女に対しては仕方なく一目置く感じで上手くとりなっていた。

イジメ行為の内容は職業上専門的な話にもなるし、文字にするのも憚れる稚拙で幼稚な内容もあるし、なので割愛する。

然し、当時は気にしない様に気にしない様にと努めても、逆に丁寧に問いただしたり、何回か抗議したとしても、陰湿で根暗い仕業は終わる事はなかった。

私は怒りを越えて、気持ち悪ささえ感じながら…生活と好きな音楽を続ける為には、此の"肉体的には楽な仕事を出来るだけ続けなくては"と耐えていた。たしか当時の彼女にも"絶対に辞めない方がいいよ"と言われていた。私の身体も心配してくれての発言だったろうし、将来の展望も見えない霧中の彼氏に不安からの発言でもあっただろう。

 

そして、其の仕事は出来ても心が歪んだ女史が何処となく松雪さん似(70点の松雪さん位?)だったのだ!

 

 

誰でも、その人にはその人なりの事情があろう。深い悩みも誰しもが抱えて抱えながら、その日その日を暮らしているーそんなもんだろう。

 

でも、70点の松雪さんにハッキリ一度だけ給湯室で二人になった際に"悪いけどキミみたいなヒト、私ダメなんだよね〜"って言われた時、ワタシには何かが視えた気がした。

"醜いな。小さいな。あぁこんなオトナにはなりたく無いな"と思ったのを覚えている。故にワタシは未だ若く、コドモだったのだろう。青く、激しく、痩せて髪の長い、粋がったコドモだったのだろう。

その若くてヤンチャだったワタシだって、ある日帰宅したら同棲してた彼女が荷物まとめて消えた後に置き手紙とカラのカラーボックス一つ…なんて笑うに笑えない経験を其の時期にしていて(笑)

けれど他人に陰湿な形で鉾先は向けない。当たり前だ。悲しくなるだけだから。

因果応報。"他人にした行いは巡り巡って形を変えて必ず返って来るかも知れない"ーその真理を教えてくれているのが、映画であるのかも知れないではないか…

 

マそれからというもの、松雪さんや松雪さん似の方を見かけるとワタシの身体に悪寒が走るのでした。

以降、現在に至るまで全国アチコチ彷徨って色んな仕事もして来たが、デスクワーク的な室内仕事は一切務めていない。トラウマかしらん…と不図思ったりする。少し。

 


松雪さん御免なさい。

 

松雪さんファンの方にも御免なさい。

 

あと、映画本編に全く関係無い話をここまで読んで憤慨している方にも御免なさい。

 

でも、この苦手意識を改善する努力をワタシしませんから。(苦笑)

デスクは自宅で座れりゃそれでいい。

自分には切り株が丁度よい。

 

 

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