半月と硝子のブイ

so-net 『半月と硝子のブイ』の再開

熱海伊豆山土石流災害に思う

過去の思い出に重なる場所でもあり、私が山仕事の従事者でもあるからか、この度の熱海伊豆山の災害事象には連日考えさせられる。

 

この期に及び現地に足を運んだ訳ではないがドローン映像を幾つか拝見すると、樹木の皆伐(全伐採)が行われたのが問題だと感じる。つまり簡単に表現すれば頭頂や肩の部分をハゲ山にしたのが問題ではないか。我々も其処に長いことジョウロで水をやり続けられたらどうなるだろうか?

話は今回の長雨ばかりに行きがちだが、思うに昨今の異常気象によるー巨大台風や強雨や昔と異なる降雪(もしくは降らない)パターンや熱波等々ーその影響全てがじわじわと見えない場所で進んでいたのは明白ではないだろうか。拝見出来るドローン画像や国土地理院の地形図等を見て次の様に鑑みた。

 

盛り土は流れた土砂堆積をたしかに増やしただろうし、今回の土石流の"誘引"にはなったであろう。然し、流れ削り取られた沢の片方の尾根側に設置されたソーラーパネルは広大な面積を占めている。誰がどう見てもその光景には脅威を覚えるだろうし、人々が昔は越えれなかった線ー謂わば越えてはならない領域ーに手を加え過ぎてしまった感は否めない。

具体的には、この設置や建設には先ず山の尾根や頂上の様な大切な場所に生えていた森林を全て切って、もしかしたら根っこ迄も機械で掘り取ってしまったのではないだろうか。

 

つまり"誘引"ではなく"原因"は、遡れば異常気象それも人間の愚かな開発や便利さ追求の成れの果てでもあろうし、(そんな視点は現時点で必要無いとするならば)短いスパンで鑑みれば、ズバリ山間部の重要エリアの"皆伐"にあるのではないかと思わざるをえない。


開発を考えた者、許可した者は少なくとも山を解ってはいない。登記簿上の土地としか思えない輩ばかりであろう。

これから責任所在を明らかにする名目で矢面に立たされる者、裁く者、どちらもある短いスパンで物事を考えなくては社会問題として前に進めない…そんな前提で補償の為になすりつけ合うしかない人間達であろう。

誰も山(昔は"お山"と畏怖の念があったよね…)の事を本気で考えてはいないんだよね…

人間の所有物とでも思ってるんだよね。怖しいよ。人間がね。

そこが我が国、国民全体の問題なんだと思う。

 

一度植林したり手を入れ出した山は間伐し下草を刈ったり手入れこそすれ、じきに植林すべく世代交代の皆伐ならば余程周囲の環境を考えながら計画的に行われるであろう。

今回の様なソーラー設置の皆伐は自然界の山に対しては一方通行の"循環しないやり方"でしかない。

"循環しないやり方"では今後も災害は起こる。

"誘引"より"原因"を、、その根本を探って欲しい。

国民全体が山を大切にして欲しい。

それは海を大切にすることに繋がり、強いては地域や国なんて枠を超えて、地球を大切にすることに繋がる筈だから。

 

災害に遭われた方の冥福を祈るならば、他人事として興味を持つのではなく、自分達の事として私達一人一人が物事の原因に思考を馳せるべきなんだと強く思う。

私は一生、微々たる力でも身体が動ける間は山仕事を続ける所存だ。

 

人が泣いている。

山も、とうに泣いている。

f:id:GeminiDoors:20210708135430j:image

追伸 添付写真は南足柄市小田原市を縦貫する久野林道。一昨年の台風と度重なる強雨で道路ごと一気に流された。この場合は戦後に植林した針葉樹山林の間伐や手入れが間に合っていないのが一番の問題と思われる。(何故間に合わないかは語れば根が深いのでまたの機会に。)