半月と硝子のブイ

so-net 『半月と硝子のブイ』の再開

拝啓 遠藤道郎様 虫になったらヨロシクです。

ミチロウさん…

あなたが癌で活動を一時休戦されていた事は知っていました。然し去る或朝の配信で、既に亡くなられていたのを知った私は驚き、呆然としました。

 

あなたは東中野から、私は阿佐ヶ谷北から、同じ高円寺PALスタに通い、互いのメンバーが揃わぬ内はよく音楽や旅やラーメンの話等をしてくれましたね。あなたはたしかVIDEO スターリンのデビュー前でした。

調布の撮影所でのスターリン解散コンサート会場に、私もダブルの革ジャンに黒スリムジーンズ&安全靴で客席に居た事を伝えた時、あなたは本当に顔をくしゃくしゃにして「アリガトウ〜」とマジマジと向き合って言われました。私はスターリンではなく遠藤道郎その人を、あの当時から平伏する様な気持ちで好きにならざるを得ませんでした。

 

既に邦楽パンクの始祖と崇められる存在のあなたなのに、青臭い若造の私を相手に、本当に優しく接してくれました。

あなたの素の朴訥とした話され方や、思いっきりな笑顔、遠くを見る様な目での沈黙を私は決して忘れる事はありませんでした。

 


あれから数十年…還暦を過ぎて尚、売れる為の妥協なんてまるでしない、流行になんて流れない生き方をした、し続けた遠藤ミチロウの様なロックミュージシャンを私は知りません。

 

皆どこかで食べてゆく為や続ける為に、上手い事器用にやっているかに見受けられて仕方ありません。反してあなたは小さなハコに拘り、全国隅々まで己の脚で歩き、手指でギターを掻き鳴らし、アオォ〜〜と狼の如く鳴き叫び続けるのでした。

 

それはまるで最後の一匹のニホンオオカミの様でした。

 

その姿は本当に芭蕉の行脚の様でした。

 

 

あなたの生き様に、敬意と感謝を払います。

 

 


対して私自身は何を守りたいのだろう…?何をどうしたいのだろう…?

未だに暗中模索と暗夜行路の日々であります。鬱鬱と、一瞬の純なほくそ笑みのリフレイン…己の荒野の用心棒であります。

 

道郎さん…ずっと"先をゆくあなた"には代わりありません。

旅と文学好きだったあなたの奥の細道は、未だ未だ続いてゆくのだと私は思う様にしますね。

 

ミチローさん!……お疲れ様でした。

 

 

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合掌。